法華講連合会 第60回総会 於 総本山
本日は、本門戒壇の大御本尊まします、ここ総本山において、法華講連合会第60回総会が開催され、まことにおめでとうございます。
つきましては、本日は『立正安国論』について少々申し上げたいと思います。
既に、皆様方も御承知の通り『立正安国論』は、今を去る764年前、文応元(1260)年7月16日、宗祖日蓮大聖人御年39歳の時、当時、寺社奉行であった宿屋左衛門入道を介して、時の最高権力者・北条時頼に提出された国主への諌暁書であります。
すなわち『立正安国論』は、大聖人が、日本国の上下万民が謗法の重科によって、今生においては天変地夭・飢饉・疫癘をはじめ、自界叛逆難・他国侵逼難等の重苦に責められ、未来には無間大城に堕ちて阿鼻の炎にむせぶことを悲嘆せられ、一往は和光同塵して仏の弟子として、再往は末法の御本仏としての大慈大悲をもって、前執権・北条時頼ならびに万民をお諌めあそばされたところの折伏諌暁書であります。
この『立正安国論』は、全体が客と主人との十問九答の形式から成っており、客の最後の問いは、そのまま主人の答えとなっております。
今、その大要を申せば、初めに、正嘉元(1257)年8月23日の前代に越えたる大地震をはじめ、近年より近日に至るまで頻発する天変地夭・飢饉・疫癘等の悲惨な状況を見て、その原因は世の中の人々が皆、正法に背き、悪法を信じていることにより、国土万民を守護すべきところの諸天善神が所を去って、悪鬼・魔神が便りを得て住み着いているためであるとし、金光明経、大集経等を引かれて、正法を信ぜず、謗法を犯すことによって、三災七難が起こると仰せられているのであります。
三災七難の「三災」とは、穀貴・兵革・疫病のことで、穀貴とは五穀、穀物の収穫が減少し、価が高くなり、入手が困難になることであります。兵革とは、戦争が起きることであります。疫病とは、伝染病が流行ることを言います。
「七難」とは、薬師経によれば、
1番目は「人衆疾疫難」で、伝染病などが流行し、多くの民衆が死亡したり、病気になったりすることであります。
2番目が「他国侵逼難」で、他国が攻め入り、侵略しようと襲ってくることであります。
3番目が「自界叛逆難」で、仲間同士が争い、内乱、自国内の戦争が起きることであります。
4番目が「星宿変化難」で、彗星や流星が現れて、星の運行に異変を生じたりすることであります。
5番目が「日月薄蝕難」で、太陽・月の軌道がずれ、寒暑が逆になることであります。
6番目が「非時風雨難」で、季節はずれの暴風雨等、天候が異変することであります。
7番目が「過時不雨難」で、雨期になっても雨が降らないことであります。
すなわち、謗法を犯すことによって、このような災難が起こると仰せられ、これら不幸と混乱と苦悩を招いている原因は、ひとえに法然の念仏であると断ぜられ、この一凶を断ち、謗法を対治して正善の妙法を立つる時、国中に並び起きるところの三災七難等の災難は消え失せ、積み重なる国家の危機も消滅して、安寧にして盤石なる仏国土が出現すると仰せられています。しかし、もし正法に帰依しなければ、七難のうち、まだ起きていない自界叛逆難と他国侵逼難の二難が競い起こると予言され、速やかに「実乗の一善」すなわち、三大秘法の南無妙法蓮華経に帰依するよう結んでおられるのであります。事実、大聖人様が予言せられた自界叛逆難と他国侵逼難の二難は、のちに北条時輔の乱、蒙古襲来となって現れたのであります。
また『立正安国論』の対告衆は、北条時頼であり、予言の大要は自界叛逆難・他国侵逼難の二難でありますが、実には一切衆生に与えられた諌暁書であります。
さらに御文中、
「如かず彼の万祈を修せんよりは此の一凶を禁ぜんには」(御書241㌻)
と仰せられているように、一往付文の辺は専ら法然の謗法を破折しておりますが、再往元意の辺は広く諸宗の謗法を破折しておられるのであります。
したがって、当抄は一往は念仏破折であり、権実相対の上からの破折でありますけれども、「立正」の意義から拝せば、一重立ち入って、天台過時の迹を破し、法華本門を立てて正とする故に本迹相対となります。さらにまた、一歩深く立ち入って拝するならば、久遠下種の正法、すなわち末法弘通の三大秘法の妙法蓮華経を立てて、本果脱益の釈尊の法華経を破するが故に種脱相対となるのであります。つまり、「立正」の「正」とは、下種の本尊にして三大秘法がその正体であります。
また「立正」の両字につきまして、総本山第二十六世日寛上人は、
「立正の両字は三箇の秘法を含むなり」(御書文段6)
と仰せであります。
すなわち「立正」とは、末法万年の闇を照らし、弘通するところの本門の本尊と戒壇と題目の三大秘法を立つることであり、正法治国・国土安穏のためには、この三大秘法の正法を立つることこそ、最も肝要であると仰せられているのであります。
さらにまた「安国」の両字につきまして、
「文は唯日本及び現在に在り、意は閻浮及び未来に通ずべし」(御書文段5)
と仰せであります。すなわち、国とは一往は日本国を指しますが、再往は全世界、一閻浮提を指しているのであります。
されば、今、世情騒然として、天災・人災などが頻発し、また世界的に大きな戦争なども起こりかねない不穏な様相を呈しておりますが、かかる時こそ、私ども一同、異体同心の団結をもって、立正安国の御理想実現へ向けて、一意専心、折伏を行じ、もって妙法広布に全力を傾注していくことが最も肝要であり、急務であることを知らなければなりません。
大聖人様は『南条兵衛七郎殿御書』に、
「いかなる大善をつくり、法華経を千万部書写し、一念三千の観道を得たる人なりとも、法華経のかたき(敵)をだにもせめざれば得道ありがたし。たとへば朝につか(仕)ふる人の十年二十年の奉公あれども、君の敵をし(知)りながら奏しもせず、私にもあだ(怨)まずば、奉公皆う(失)せて還ってとが(咎)に行なはれんが如し。当世の人々は謗法の者とし(知)ろしめすべし」(御書322㌻)
と仰せられ、『持妙法華問答抄』には、
「『三界は安きこと無し、猶火宅の如し』とは如来の教へ『所以に諸法は幻の如く化の如し』とは菩薩の詞なり。寂光の都ならずば、何(いづ)くも皆苦なるべし。本覚の栖を離れて何事か楽しみなるべき。願はくは『現世安穏後生善処(げんせあんのんごしようぜんしよ)』の妙法を持つのみこそ、只今生の名聞後世の弄引なるべけれ。須く心を一にして南無妙法蓮華経と我も唱へ、他をも勧めんのみこそ、今生人界の思出なるべき」(御書300㌻)
と仰せられ、『立正安国論』には、
「早く天下の静謐を思はゞ須く国中の謗法を断つべし」(御書247㌻)
と仰せであります。
されば、私ども一同、これらの御金言を拝し、邪義邪宗の謗法の害毒によって世の中が乱れ、苦悩に喘ぐ多くの人々を一日も早く、そして一人でも多く救済すべく折伏を行じ、もって妙法広布に全力を傾注していくことが、今こそ急務であることを銘記され、講中一結・異体同心し、勇躍として折伏を行じられますよう心から願うものであります。
どうぞ皆様には、
「異体同心なれば万事を成じ、同体異心なれば諸事叶ふ事なし」(御書1389㌻)
との御金言を拝し、本年「折伏前進の年」に当たり、勇躍として前進されますよう心から願い、本日の挨拶といたします。
(大白法 令和6年4月1日 第1122号 転載)