(令和6年7月28日 於 総本山大講堂)
本日は、ここ本門戒壇の大御本尊まします総本山におきまして、法華講連合会第28回少年部大会が開催され、まことにおめでとうございます。
また、ただいまは少年部員3名による体験発表がありましたが、いずれの発表も大変すばらしく、法華講の未来を担う少年部員が日ごろの信心と広布への熱い思いを込めて、発表をされたことを心から頼もしく、またうれしく思います。
本日、体験発表された少年部員をはじめ全国の少年部の皆さんが、これからも末法の御本仏宗祖日蓮大聖人様の教えをしっかりと守り、広宣流布への道をたくましく堂々と歩まれますよう心から願うものであります。
つきましては、本日は法華経寿量品に説かれる「良医病子の警え」について、少々、お話ししたいと思います。
その内容を申し上げますと、智慧が勝れ、賢く、薬についてもよく知っていて、多くの病気を治す優れた医者がおりまして、この医者に百人もの子供がいました。
ある時、その医者が用事があって、遠い国へ旅に出ていった留守の間に、子供達は誤って毒薬を飲んでしまい、苦しさのあまり、地に転げ回っていたのであります。そこへ、父である医者が帰ってきて、その有り様を見るや否や、直ちに薬を調合して子供達に与えたのであります。子供達のなかで、本心を失っていない者は、すぐにこの薬を飲んで治りましたが、毒気のため、本心を失った子供達は薬を見ても、これはよくない薬ではないかと疑って、飲もうとしなかったのであります。
そこで、父親である医者は、なんとか薬を飲ませようと「よく効く薬を、ここに置いておく。おまえ達は取って飲みなさい」と言い残して、よその国へ行ってしまったのであります。そして、使いの者を子供達の所へ遣わして「父は死んだ」と告げさせたのでありまず。
この時、本心を失っていた子供達は、父親が死んだと聞いて、嘆き悲しみ、毒気から醒めて本心を取り戻し、残された薬を飲んで病気を治すことができたのであります。父の医者は、このことを聞くと、すぐに子供達の所へ帰ってきたという話であります。
この譬え話を説かれた釈尊は、父である医者が使いの者を遣わして「父は死んだ」と嘘を言わせた罪を、誰も責めないであろうとし、自分もまた良き医者のように方便力をもって、このインドに生まれて修行し、その結果、始めて成仏したように述べてきたけれども、実は既に、はるか遠い昔に仏に成っていたと説き明かされたのであります。
このことについて、日蓮大聖人様は『御義口伝』のなかで、
「子供達が誤って毒薬を飲んでしまったということは、子供達が念仏や、禅、真言の謗法の毒薬を誤って飲んでしまったことである」(御書 1768㌻取意)
と仰せられ、さらに、
「『是の好き良薬を、今留めて此に在く。おまえ達は取って飲みなさい(是好良薬。今留在此。汝可取服)』と仰せになっている『良薬(よく効く薬)』とは南無妙法蓮華経のことである。また『今留(今留めて)』とは末法を指すのであり、『在此(此に在く)』の『此』とは世界のなかでも日本国を指すのである。『汝』とは末法のすべての人々のことであり、『取って』とは法華経、すなわち御本尊様を受持することである。『服する(薬を飲む)』ということは題目を唱えることである」(同 1769㌻取意)
と仰せられているのであります。
私どもは今、この御文を拝し、なお一層の努力をもって信心に励み、一人でも多くの人々に、たとえ一文一句なりとも、末法の御本仏日蓮大聖人様の正しい教えを伝え、下種折伏していくことがいかに大切なことであるかを知り、お互いが声を掛け合い、励まし合い、世界中のすべての人の幸せを願い、広宣流布を目指してたくましく前進していくことが大事であります。
皆さんも御承知の通り、今、世界は苦悩と混乱の姿そのままに人心は乱れ、争いが絶えず、いつ世界的な大きな戦争に拡大しかねない極めて危険な状態にあります。
されば私達は、真の世界平和実現のため、また、すべての人々の幸せを願って、まずは基本中の基本たる、朝夕の勤行をしっかりと行い、親しい友達には声を掛け、少年部会などにお誘いし、大聖人様の仏法のすばらしさを伝え、いよいよ妙法広布への道を進まれますよう心から願い、一言もって本日の挨拶といたします。
(大白法 令和6年8月16日 第1131号転載)