本日は、七月度の広布唱題会に当たりまして、皆様には諸事万端御繁忙のところを参加され、まことに御苦労さまでございます。
 既に皆様も御承知の通り、七月は宗祖日蓮大聖人様が宿屋左衛門入道を介して、時の最高権力者・北条時頼へ『立正安国論』を上呈された月であります。
 すなわち、大聖人様は正嘉元(一二五七)年八月二十三日の前代に超えたる大地震をはじめ、同二年八月一日の大風、同三年の大飢饉、そして同じ年の正元元(一二五九)年および同二年の大疫病等遍く天下に満ち、世上騒然とした状況を深く憂えられ、国土退廃の根本原因は邪義邪宗の謗法の害毒にあると断じて、もし邪義邪宗への帰依をやめなければ、自界叛逆・他国侵逼の二難をはじめ、様々な難が必ず競い起こると予言されたのであります。こうした災難を防ぐためには、
 「汝早く信仰の寸心を改めて速やかに実乗の一善に帰せよ」(御書二五〇㌻)
と仰せられて、安穏なる仏国土を実現するためには一刻も早く謗法の念慮を断ち、「実乗の一善」に帰することであると諌められているのであります。
 「実乗の一善」とは、大聖人様の元意は文上の法華経ではなく、寿量品文底独一本門の妙法蓮華経のことであり、三大秘法の随一、大御本尊様のことであります。この大御本尊様に帰依することが、国を安んずる最善の方途であると仰せられているのであります。
 また、総本山第二十六世日寛上人は「立正」の両字について、
 「立正の両字は三箇の秘法を含むなり」
(御書文段六㌻)
と仰せであります。
 すなわち「立正」とは、末法万年の闇を照らし、弘通するところの本門の本尊と戒壇と題目の三大秘法を立つることであり、国土安穏のためには、三大秘法を立つることこそ肝要であると仰せられているのであります。
 また「安国」の両字については、
 「文は唯日本及び現在に在り、意は閻浮及び未来に通ずべし」(同五㌻)
と仰せられています。
 すなわち「国」とは、一往は日本国を指すも、再往は全世界、一閻浮提を指しているのであります。
 さらに『立正安国論』の対告衆は北条時頼でありますが、実には一切衆生に与えられた諌言書であります。また、予言の大要は自界叛逆難・他国侵逼難の二難を示して、一往付文は専ら法然の謗法を破折しておりますが、再往元意の辺は広く諸宗の謗法を破折しているのであります。
 すなわち『立正安国論』は、一往付文の辺では、当時の為政者に対する諌言書でありますが、再往元意の辺から拝せば、末法の一切衆生に対し、自行の信心のみならず、化他行の折伏を行じ、もって立正安国の実現を図るべきことを指南あそばされた書であると言えるのであります。
 今、宗門は僧俗一致の体勢を構築し、折伏誓願の達成を目指して総力を結集し、前進しております。そのためには、講中の老若男女すべての人が心を一つにして唱題に励み、その唱題の功徳と歓喜をもって全員が立ち上がり、異体同心して一天広布を目指した戦いを展開し、破邪顕正の折伏を行じていくことが最も肝要であります。
 既に本年も半分を過ぎ、残りあと半年となりました。されば貴重な時間を無駄にすることなく有効に使い、各支部ともに異体同心・一致団結して、御宝前にお誓い申し上げました折伏誓願は必ず達成すべく、いよいよ御精進くださるよう心から念じ、本日の挨拶といたします。
(大白法 令和4年7月16日 第1081号 転載)