そもそも仏教は、仏が教えを説き、その説かれた通りに人々が修行を進め、功徳利益を得ていく宗教です。

師弟相対について
 師弟の関係は、よく針と糸の関係に例えられ、糸が針に導かれて布を縫っていくように、師匠の仰せに弟子が素直に従って仏道修行に励むことで、初めて正しい教えの利益を受けることができるのです。
 総本山第二十六世日寛上人は、『如説修行抄』の題号を講じられるなか、在世滅後に通じる三義を挙げられ、そのなかで、
「師弟相対に約せば、如説とは師説なり。(中略)師の所説の如く弟子之を修行す、是れ如説修行なり」(御書文段 五八九㌻)
と、弟子が師匠の説く教えのままに修行に精進することが如説修行であると、御教示されています。
 今回は、私たちの信心修行に不可欠な、「師弟相対の信心」について学びます。

師弟相対の淵源
 私たちにとって師弟相対の源は、日蓮大聖人様に対し奉る、第二祖日興上人の御振る舞いにあります。
 日興上人は、大聖人様に真摯にお仕えし、仏法を学んで修行され、伊豆や佐渡の御配流には随従して、苦難を共にされました。
 そして、大聖人様が身延へ入山された後は、有縁の地である甲斐・駿河に出向いて弘教に励まれ、特に熱原法難では、大聖人様の御指南のもとに陣頭指揮をとって、苦中の法華講衆を導き、奔走されたのです。
 このように、大聖人様に直接お仕え申し上げ、その御振る舞いを目の当たりにすると共に、正しい教えを拝受し、大聖人様の文底下種の仏法を深く体得されたのです。
 これにより、日興上人は大聖人様を末法の御本仏と仰がれたのであり、このことは南条時光殿に送られたお手紙に、
「ほとけしやう人の御けんさんに申しあげまいらせ候ぬ」
とあることからも明らかです。
 そして、『日蓮一期弘法付嘱書』に、
「日蓮一期の弘法、白蓮阿闍梨日興に之を付嘱す、本門弘通の大導師たるべきなり」(御書 一六七五㌻)
とあるように、大聖人様は、師弟相対を尽くされる日興上人を法嗣と定められ、仏法の一切を御相承されたのです。
 以来、日蓮正宗の相伝は唯授一人の血脈相承により、御当代御法主日如上人猊下まで伝持されているのです。

手続の師匠と師弟の筋目
 「手続の師匠」について、総本山第九世日有上人は『化儀抄』に、
「手続の師匠の所は、三世の諸仏、高祖已来代々上人のもぬけられたる故に、師匠の所を能く能く取り定めて信を取るべし、又我が弟子も此くの如く我に信を取るべし」(日蓮正宗聖典 一二〇三㌻)
と御教示されております。
 代々の御法主上人猊下の御内証には、三世の諸仏ならびに御本仏日蓮大聖人様・日興上人以来、唯授一人の血脈法水が通っているので、時の御法主上人猊下を「手続の師匠」と定めて、師弟相対の信心に精進すべきことを御指南です。
 つまり、唯授一人の血脈相承そのものが、「手続の師匠」の本義なのです。
 そして、御法主上人猊下の御命を受けて、国内外各地の法城である末寺に赴任され、御法主上人猊下の御指南をもとに、私たちの信心の御指導と育成をしてくださるのが、所属寺院の御住職・御主管(指導教師)です。
 したがって私たちは、御住職・御主管の御指導を受けて信心活動の歩みを進めていくことが、御法主上人猊下の御命に叶った師弟相対の信心となるのです。
 このことについて、総本山第六十七世日顕上人は、
「『手続の師匠』は、当代の法主であるとともに、またその旨を受け、意を受けて、日本全国、乃至世界の各地にその命を受けて赴き、法を弘宣するところの僧侶であり、その各々の僧侶の命の中に大聖人様の仏法の功徳が存する」(大白法 三四六号)
と御指南されております。
 私たちは、この「手続の師匠」の本義をしっかりと理解し、御住職・御主管の御指導のもとで信心修行に精進することが肝要です。
 また、師弟の筋目について、日興上人は『佐渡国法華講衆御返事』に、
「なをなをこの法門は師弟子を正して仏になり候。師弟子だにも違い候へば、同じ法華を持ちまいらせて候へども無間地獄に堕ち候なり」(日蓮正宗聖典 七〇二㌻)
と、師匠と弟子の筋目を正すところに成仏があり、これを違えたならば貴い法華経を受持信行しようとも、無間地獄に堕ちると、厳しく訓誡されています。

師弟相対の信心に励もう
 御住職・御主管は、御法主上人猊下の御意を体して寺院を護り、所属の信徒一人ひとりの成仏を願って御指導にあたられています。
 大聖人様は『新池御書』に、
「何としても此の経の心をしれる僧に近づき、弥法の道理を聴聞して信心の歩みを運ぶべし」(御書 一四五七㌻)
と仰せです。
 毎月奉修される御報恩御講をはじめ、唱題行や勉強会などの寺院行事に率先して参詣し、御法話を聴聞し、御指導を受けることで、信心に対する確信が深まります。
 また、独断や偏見による自分勝手な信心を誡め、正しい信心の在り方を学び、折伏の際に必要な知識等も身につけることができます。
 それによって、地区や班単位で開催される座談会などで、今、手にされている『大白法』等の機関紙を活用し、御法主上人猊下の御指南や、御住職・御主管の御指導を拝し、自他の信心を励ましていくことで、講中、異体同心の団結が深まります。
 そして、講中が異体同心の団結をもって御住職・御主管を中心に、支部役員や講員同志で助け合いながら、折伏活動に励んでいくことが大事なのです。
 以上のように、血脈付法の御法主上人猊下の御指南をもとに、御住職・御主管の御指導に従い、師弟の筋目を違えることなく、素直に信心修行に励むことが、師弟相対の信心なのです。
 これからも私たちは、この師弟相対の信心姿勢を肝に銘じ、寺院参詣を中心とした自行化他に励んでまいりましょう。
(大白法 令和5年12月1日 第1114号転載)